上海真輝情報技術有限公司(以下「HELIOS」)は、企業向け財務管理のための SaaS システムを提供しています。同社の ApsaraDB RDS for MySQL インスタンスでは PL1 ESSD を採用していましたが、そのスループット上限は 350 MB/s でした。1 日あたり 3~4 時間のピーク期間中、読み取り/書き込み負荷がこの上限を超え、クエリの遅延が発生していました。PL1 ESSD から汎用 ESSD ストレージタイプへの変更と I/O バースト機能の有効化により、HELIOS はビジネスアーキテクチャの変更や追加コストを伴わず、ボトルネックを解消しました。
このユースケースは、お客様の課題に該当しますか?
汎用 ESSD + I/O バーストのソリューションは、データベーストラフィックに明確なピークと谷がある場合に高い効果を発揮します。すなわち、I/O 要求が数時間にわたり現在使用中の ESSD の上限を超えるものの、その後再び低下するというパターンです。
以下のいずれかに該当する場合、本ソリューションが適しています:
RDS インスタンスで PL1 ESSD を使用しており、ピーク時間帯に 350 MB/s のスループット上限に達している
ピークトラフィックが継続的ではなく、数時間程度の短時間であるため、ベースライン容量を満たすために高階層の ESSD をプロビジョニングすると、オフピーク時のリソースが無駄になる
1 時間あたりの I/O 操作数が 500,000 を超えない — Alibaba Cloud が提供する無料バーストクォータの範囲内 — であるため、追加コストなしでピーク性能を向上できる
ただし、1 時間あたりのピーク I/O 操作数が 500,000 を定期的に超える場合は、I/O バースト分の従量課金が発生します。
HELIOS について
2016 年 8 月に設立された HELIOS は、企業向け経費管理、支出管理、電子アーカイブを実現するソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)を提供しています。同社の製品「HELIOS」「HELIOS Selected」「e-FILING」「Spendia」は、中国、日本およびグローバル市場の顧客に利用されています。
HELIOS はブルーレイク・キャピタル、チャイナ・ルネッサンス、SB チャイナ・キャピタル(SBCVC)、Z キャピタル、ユニコーン・キャピタルなどから出資を受けており、国家ハイテク企業証明書、SOC 1、SOC 2、マルチレベル保護スキーム(MLPS)レベル 3、ISO/IEC 27001、ISO/IEC 27017 などの認証を取得しています。
ビジネスチャレンジ:ピーク時間帯におけるクエリの遅延
HELIOS の SaaS アーキテクチャは、標準的な大規模レプリケーションおよびマルチテナントモードを採用しています。顧客数の増加に伴い、以下の 3 つの課題が顕在化しました:
パフォーマンスボトルネック:オフピーク時間帯には、コア RDS インスタンスの読み取り/書き込み負荷は 350 MB/s を下回っていましたが、ピーク時間帯(1 日あたり約 3~4 時間)では PL1 ESSD のスループット上限である 350 MB/s を超過し、データベースクエリの応答が著しく遅延しました。
スケーリングの柔軟性:顧客ごとに異なるデータベース構成が必要です。HELIOS は、大部分の時間をアイドル状態で過ごす過剰なリソースをプロビジョニングすることなく、トラフィック急増に対応可能なストレージアーキテクチャを必要としていました。
運用・保守(O&M)の複雑さ:多数のデータベースインスタンスの管理、重要顧客向けのデータ移行および隔離のサポート、ゼロダウンタイム移行の保証など、すべての作業が運用上のオーバーヘッドを増加させていました。

典型的な SaaS アーキテクチャ
ソリューション:汎用 ESSD ストレージタイプへのアップグレード
PL1 ESSD では不十分だった理由
PL1 ESSD では、I/O 性能がストレージ容量に依存します。ESSD は 25 Gbps イーサネットおよび RDMA 技術を活用し、標準 SSD と比較してディスク単位のランダム読み取り/書き込み IOPS を大幅に向上させ、片方向レイテンシを短縮します。以下の表に PL1 の制限値を示します。
| パフォーマンスレベル | 説明 | 容量範囲(GiB) | 最大 IOPS | 最大スループット(MB/s) |
|---|---|---|---|---|
| PL1 | 同時 I/O が中程度、低レイテンシ | 20~65,536 | 50,000 | 350 |
HELIOS のモニタリング結果でも同様の傾向が確認されました。オフピーク時間帯にはスループットが 350 MB/s を十分下回って安定していましたが、ピーク時間帯には上限に到達し、かつその状態が持続していました。これは、容量不足ではなく、I/O スロットルによる明確な制限の兆候です。

ピーク時間帯における I/O スループット(PL1 ESSD)
PL1 ESSD の IOPS および帯域幅制限を引き上げるためにストレージ容量を拡張する方法も検討されましたが、これはピークウィンドウ以外では未使用となるリソースに対して課金されるという課題がありました。
汎用 ESSD の仕組み
汎用 ESSD は、PaaS と IaaS を統合した 3 層アーキテクチャに基づくストレージタイプです:
キャッシュレイヤー:ホットデータを格納する高性能ディスクで、I/O スループットを最大化
データレイヤー:ウォームデータを格納する ESSD で、パフォーマンスとコストのバランスを最適化
コールドストレージレイヤー:コールドデータを格納する Object Storage Service (OSS) バケットで、ストレージコストを最小化
このアーキテクチャにより、I/O 性能とストレージ容量が分離されます。汎用 ESSD は AliSQL を活用して I/O バーストを検出し、需要に応じて自動的にスループットをスケールアップし、負荷が低下すると元のレベルへスケールダウンします。
I/O バーストの仕組み
I/O バースト機能が無効の場合、最大 IOPS および最大スループットはストレージ容量に依存します(標準 PL1 ESSD の動作)。有効化すると、上限値は大幅に引き上げられます:
| I/O バースト | 最大 IOPS | 最大スループット(MB/s) |
|---|---|---|
| 無効 | min{50,000, インスタンスタイプの最大 IOPS, 最大 I/O 帯域幅に対する IOPS, 1,800 + 50 × ストレージ容量} | min{350, 最大 I/O 帯域幅, 120 + 0.5 × ストレージ容量} |
| 有効 | min{1,000,000, インスタンスタイプの最大 IOPS, 最大 I/O 帯域幅に対する IOPS} | min{4,000, 最大 I/O 帯域幅} |
トラフィックスパイク発生時に、システムは自動的にバーストモードへ移行し、負荷に対応するために I/O 制限を引き上げ、需要が低下すると通常レベルへ戻ります。手動介入は一切不要です。
I/O バーストは、お客様のワークロードに十分ですか? 無料バーストクォータは 1 時間あたり 500,000 回のバースト可能 I/O 操作です。明確なトラフィックピークを持つほとんどの SaaS ワークロードでは、このクォータはピーク時の実際の要求量を十分に上回ります — HELIOS のピーク使用量もこの無料クォータ内に収まっています。ただし、ワークロードが定期的に無料クォータを超過する場合は、I/O バースト分の従量課金が適用されます。ピーク I/O が無料クォータを超えるかどうかを確認するには、アップグレード前に RDS のモニタリングダッシュボードで 1 時間あたりの I/O 操作数を確認してください。
アップグレードプロセス
Alibaba Cloud のチームは、HELIOS の研究開発チームと連携し、PL1 ESSD から汎用 ESSD への切り替えを実施しました。このアップグレードは既存のビジネスターキテクチャを維持し、アプリケーション側の変更は一切不要でした。
アップグレード後の成果
汎用 ESSD および I/O バースト機能を有効化した後、ピーク時のスループットは最大 4,000 MB/s までスケールアップします。RDS インスタンスはピーク時間帯においてもスロットルされず、I/O 容量不足に起因するクエリの遅延は発生しなくなりました。

ピーク時間帯における I/O スループット(汎用 ESSD)
メリット
ピーク時におけるパフォーマンス劣化なし:I/O バーストがトラフィックスパイクを自動的に吸収します。ピーク時間帯でもデータベースはフルキャパシティで稼働し、手動介入は不要です。
PL1 ESSD と同一の価格:汎用 ESSD の基本価格は PL1 ESSD と同等です。HELIOS のピーク I/O 使用量は Alibaba Cloud が提供する 1 時間あたり 500,000 回の無料バーストクォータ内に収まっているため、追加コストなしでパフォーマンスを向上できます。
アーキテクチャ変更不要:本アップグレードはストレージタイプの切り替えのみであり、既存のアプリケーションコード、データベーススキーマ、ビジネスワークフローは一切変更されません。
お客様の声
「Alibaba Cloud は、安定した環境、一流のサービス、優れた技術力で私たちの信頼を獲得しただけでなく、課題に直面した際にも効果的な支援を提供してくれました。特に、データベースのボトルネック対応やディスク切り替えについては継続的に注力いただき、データベースの円滑な運用を確保できました。今後も Alibaba Cloud からの継続的な支援を期待しています。」
— 上海真輝情報技術有限公司 技術部長 馬 雲飛 氏