バースト可能インスタンス (t5 インスタンスとも呼ばれます) は、ベースラインを超えてバーストする機能を備えたベースラインレベルの CPU パフォーマンスを提供します。 それぞれの t5 インスタンスは、ベースライン CPU パフォーマンスを提供し、インスタンスタイプに基づいて指定されたレートで CPU クレジットを獲得します。 t5 インスタンスは起動すると、サービスの要件を満たすために CPU クレジットを消費します。 ベースラインよりも高いパフォーマンスを必要とする場合、インスタンスはより多くの CPU クレジットを消費し、インスタンスの環境やアプリケーションに影響することなくCPU パフォーマンスをシームレスに増加させます。
t5 インスタンには 2 つの実行モードがあります。"標準" および "無制限" です。
基本概念
- ベースライン CPU パフォーマンス
それぞれの t5 インスタンスタイプは、ベースラインレベルの CPU パフォーマンスを提供します。
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これは、通常のワークロードではそれぞれの vCPU に使用率制限があることを意味します。 たとえば、ecs.t5-lc1m2.small 標準インスタンスが通常のワークロードで実行している場合、最大 CPU 使用率は 10% です。 ベースラインを超えるバーストのため、多くのクレジットを消費します。 クレジットを使い切った後、最大 CPU 使用率は 10% になります。
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対照的に、t5 無制限インスタンスはベースラインに制限されず、いつでも高い CPU パフォーマンスを維持できます。 ただし、超過分のクレジットに対して課金されます。
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- CPU クレジット
それぞれの t5 インスタンスは、ベースライン CPU パフォーマンスに基づいた固定レートで CPU クレジットを獲得します。 1 CPU クレジットはコンピューティングパフォーマンスを表し、vCPU コア数、CPU 使用率および実行時間に関係します。 例:
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1 CPU クレジット = 1 つの vCPU コアが 100% の使用率で 1 分間の実行
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1 CPU クレジット = 1 つの vCPU コアが 50% の使用率で 2 分間の実行
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1 CPU クレジット = 2 つの vCPU コアが 25% の使用率で 2 分間の実行
1 つの vCPU コアが 100% の使用率で 1 時間実行するためには、60 CPU クレジットが必要です。
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- 初期 CPU クレジット
t5 インスタンスを作成するたびに、インスタンスのそれぞれの vCPU コアに対してすぐに 30 CPU クレジットが割り当てられます。これを初期 CPU クレジットと呼びます。 初期 CPU クレジットはインスタンス作成時のみ割り当てられます。 加えて、インスタンスがクレジットを使い始める場合、最初に初期 CPU クレジットが消費されます。
- CPU クレジット獲得レート
t5 インスタンスは、分単位で CPU クレジットを獲得します。 CPU クレジット獲得レートは、単位時間 (分) あたりの 1 つの t5 インスタンスにより得られる CPU クレジットを示します。 CPU クレジットは、ベースライン CPU パフォーマンスにより決定されます。 計算式は以下のようになります。
CPU クレジット獲得レート = ベースライン CPU パフォーマンスマンス x vCPU 数
例として、ecs.t5-c1m2.xlarge インスタンスを使用します。 平均ベースライン CPU パフォーマンスは 15%で、CPU クレジット獲得レートは 1 分あたり 0.6 CPU クレジットとすると、1 時間あたり 36 CPU クレジットとなります。
- CPU クレジットの消費量
t5 インスタンスが起動されると、CPU クレジットを消費します。 最初に初期 CPU クレジットが消費されます。 1 分あたりの CPU クレジットの消費量の計算式は以下のようになります。
1 分あたりの CPU クレジット消費量 = 1 CPU クレジット x 実際の CPU パフォーマンス
例として、ecs.t5-lc1m2.small インスタンスを使用します。 1 分間に 20% の CPU 使用率で実行した場合、0.2 CPU クレジットを消費します。
- CPU クレジットの発生
t5 インスタンスの CPU 使用率がベースライン CPU パフォーマンスよりも低い場合、インスタンスは CPU クレジットを獲得します。これは、CPU クレジット消費レートが CPU クレジット獲得レートより低いためです。 それ以外の場合、インスタンスは CPU クレジットを全体的に消費します。 CPU クレジット発生レートは、実際の CPU 負荷とベースラインパフォーマンスの間の差により決定されます。 計算には、以下の式を使用できます。
1 分間の CPU クレジット発生レート = 1 CPU クレジット x (ベースライン CPU パフォーマンス - 実際の CPU パフォーマンス)
ECS コンソールで「発生および消費 CPU クレジットの表示」を行えます。
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最大 CPU クレジット残高
CPU クレジットは、CPU クレジット獲得レートが CPU クレジット消費レートより大きい場合に増加します。 発生したクレジットは、実行中のインスタンスでは期限切れすることはありません。 ただし、インスタンスにより獲得されるクレジットには上限があり、これを、最大 CPU クレジット残高と呼びます。 上限はインスタンスによって異なります。
ecs.t5-lc2m1.nano を例にとると、最大 CPU クレジット残高は 144 です。 CPU クレジット残高が 144 に達すると、発生は一時停止します。 残高が 144 を下回ると、発生が再び始まります。
CPU クレジットに影響するインスタンスの停止方法
「CPU 稼働率および CPU クレジットの表示」機能、または「StopInstance API」を通じて t5 を停止させた後、以下の表に示すように、課金方法およびネットワークタイプに応じて CPU クレジットが変わります。
ネットワークタイプ | 課金方法 | インスタンス停止後の CPU クレジットの変更方法 |
---|---|---|
クラシックネットワーク | サブスクリプションまたは従量課金 | 既存の CPU クレジットが有効で、クレジットの発生が続きます。 |
VPC | サブスクリプション | |
従量課金 (「停止した VPC インスタンスへの無課金」機能の無効化) | ||
従量課金 (「停止した VPC インスタンスへの無課金」機能を有効化) | 停止が無効になる前は、CPU クレジットが発生します。 再起動後、インスタンスは再度、初期 CPU クレジットを獲得します。 |
再起動後、インスタンスは CPU クレジットを発生し続けます。
従量課金インスタンスに支払延滞分がある場合、またはサブスクリプションインスタンスの有効期限が切れている場合、 インスタンスの CPU クレジットは有効なままですが、新しい CPU クレジットは発生しません。 インスタンスを「再有効化」または「更新」した後、インスタンスは自動的に CPU クレジットを発生させます。
インスタンスタイプ
t5 インスタンスは Intel Xeon プロセッサーを使用します。 インスタンスタイプのリストは以下の表のようになります。 この表では:
- CPU クレジット/時間は、1 時間あたりの 1 つの t5 インスタンスのすべての vCPU コアに対して割り当てられた合計の CPU クレジットを示します。
- 平均ベースライン CPU パフォーマンスは、t5 インスタンスのそれぞれの vCPU コアの平均ベースライン CPU パフォーマンスを示します。
インスタンスタイプ | vCPU | 平均ベースライン CPU パフォーマンス | 初期 CPU クレジット | CPU クレジット/時間 | 最大 CPU クレジット残高 | メモリ (GiB) |
---|---|---|---|---|---|---|
ecs.t5-lc2m1.nano | 1 | 10% | 30 | 6 | 144 | 0.5 |
ecs.t5-lc1m1.small | 1 | 10% | 30 | 6 | 144 | 1.0 |
ecs.t5-lc1m2.small | 1 | 10% | 30 | 6 | 144 | 2.0 |
ecs.t5-lc1m2.large | 2 | 10% | 60 | 12 | 288 | 4.0 |
ecs.t5-lc1m4.large | 2 | 10% | 60 | 12 | 288 | 8.0 |
ecs.t5-c1m1.large | 2 | 15% | 60 | 18 | 432 | 2.0 |
ecs.t5-c1m2.large | 2 | 15% | 60 | 18 | 432 | 4.0 |
ecs.t5-c1m4.large | 2 | 15% | 60 | 18 | 432 | 8.0 |
ecs.t5-c1m1.xlarge | 4 | 15% | 120 | 36 | 864 | 4.0 |
ecs.t5-c1m2.xlarge | 4 | 15% | 120 | 36 | 864 | 8.0 |
ecs.t5-c1m4.xlarge | 4 | 15% | 120 | 36 | 864 | 16.0 |
ecs.t5-c1m1.2xlarge | 8 | 15% | 240 | 72 | 1,728 | 8.0 |
ecs.t5-c1m2.2xlarge | 8 | 15% | 240 | 72 | 1,728 | 16.0 |
ecs.t5-c1m4.2xlarge | 8 | 15% | 240 | 72 | 1,728 | 32.0 |
ecs.t5-c1m1.4xlarge | 16 | 15% | 480 | 144 | 3,456 | 16.0 |
ecs.t5-c1m2.4xlarge | 16 | 15% | 480 | 144 | 3,456 | 32.0 |
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例として、ecs.t5-c1m1.xlarge を使用します。
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それぞれの vCPU コアに対して、平均ベースラインパフォーマンスは 15% です。 そのため、インスタンスの合計のベースラインパフォーマンスは 60% (4 vCPU x 15%) となります。 詳細は以下のようになります。
- インスタンスが 1 つの vCPU コアのみ使用した場合、このコアはベースラインパフォーマンスの 60% を提供します。
- インスタンスが 2 つの vCPU コアを使用する場合、それぞれコアに対してベースラインパフォーマンスの 30% が割り当てられます。
- インスタンスが 3 つの vCPU コアを使用する場合、それぞれコアに対してベースラインパフォーマンスの 20% が割り当てられます。
- インスタンスが 4 つすべての vCPU コアを使用する場合、それぞれコアに対してベースラインパフォーマンスの 15% が割り当てられます。
注 ニーズが発生した場合、CPU パフォーマンスを向上するため、CPU クレジットが消費されます。 それぞれの vCPU コアのパフォーマンスは 100% まで増加します。 -
インスタンスは 1 時間あたり 36 CPU クレジットを獲得します。これは、それぞれの vCPU コアが 1 時間あたり 9 CPU クレジットを獲得することを意味しています。
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例として、ecs.t5-c1m2.4xlarge を使用します。
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それぞれの vCPU コアに対して、平均ベースラインパフォーマンスは 15% です。 そのため、インスタンスの合計のベースラインパフォーマンスは 240% (16 vCPU x 15%) となります。 詳細は以下のとおりです。
- インスタンスが 1 つの vCPU コアのみ使用した場合、このコアはベースラインパフォーマンスの 100% を提供します。
- インスタンスが 2 つの vCPU コアを使用する場合、それぞれコアに対してベースラインパフォーマンスの 100% が割り当てられます。
- インスタンスが 3 つの vCPU コアを使用する場合、それぞれコアに対してベースラインパフォーマンスの 80% が割り当てられます。
- インスタンスが 16 の vCPU コアすべてを使用する場合、それぞれコアに対してベースラインパフォーマンスの 15% が割り当てられます。
注 ニーズが発生した場合、CPU パフォーマンスを向上するため、CPU クレジットが消費されます。 それぞれの vCPU コアのパフォーマンスは 100% まで増加します。 -
インスタンスは 1 時間あたり 144 CPU クレジットを獲得します。これは、それぞれの vCPU コアが 1 時間あたり 9 CPU クレジットを獲得することを意味しています。
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課金方法
t5 インスタンスは、従量課金およびサブスクリプション両方の課金方法をサポートします。 課金方法の違いについては、「課金方法の比較」をご参照ください。